エネルギー供給機構とは
筋収縮のためにはアデノシン3リン酸(ATP)が必要です。
しかし筋線維内に貯蔵されているATPは約2秒の筋収縮に必要な量しかありません。
運動を継続するためにはエネルギー供給機構によりATPを供給され続ける必要があります。
エネルギー供給機構は、ATP-CP系、解糖系、有酸素系によって筋収縮のために必要なATPを供給し続けるシステムです。
球技系スポーツ
球技は短時間で瞬発的な力発揮を繰り返し求められます。
プレー時間が短く、プレー中断時間が長いものほどATP-CP系の貢献度が高い傾向にあります。
一方で、プレー時間が比較的長い競技では解糖系、プレー中断時間が比較的短い競技では有酸素系の貢献度が高いことがわかります。
ただし、野球の投手やサッカーのゴールキーパーなど、ポジションによっても貢献度が異なることには注意が必要です。
陸上競技
陸上競技のほとんどが、一定距離を走行し、そのタイムを競う競技です。
100m走では運動開始後約8秒までエネルギーを供給するATP-CP系と、その後のエネルギーを供給する解糖系の貢献度が高いことがわかります。
一方、マラソンでは、ほぼ全てが有酸素系によるエネルギー供給です。
近年のトップレベルのマラソンにではスパートをかけた際などに高い乳酸濃度(OBLA以上)にもかかわらず長い時間、そのスピードを維持できる選手が多いことがわかっています。
マラソン選手も解糖系に対してのアプローチが重要である可能性があります。
また、投擲競技や跳躍競技はほとんどすべてがATP-CP系の貢献度に依存しています。
競泳
競泳も陸上競技と同じく、一定距離を泳ぎ、そのタイムを競う競技です。
しかし、100mであっても男子の世界記録レベルで47秒を切るタイムです。
そのため、解糖系(約33秒)のみでエネルギー供給を乗り切ることはできません。
有酸素系の貢献度が比較的高い傾向があります。
陸上競技の5,000mの世界記録が13分弱で、競泳の1,500mの世界記録が15分弱。
両者のエネルギー供給機構貢献度は非常に類似しています。
古い文献であることに注意
1970年代から1990年代の論文をもとにした文献を参考に作図をしています。
そのため、今の世界記録レベルとはタイムが異なることに注意が必要です。
競技に合わせたトレーニングを
競技にマッチしたトレーニングを行うことが求められます。
「走り込みがいい」、「投げ込みがいい」と一概には考えずに、エネルギー供給機構をしっかりと配慮した上で、その競技に合わせた運動時間、距離、休息時間の設定をしてトレーニングに組み込みましょう。
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