この記事は、大腿筋膜張筋の筋力・柔軟性評価についてアスレティックトレーナーや医療従事者を目指す学生など、初学者向けに書かれています。
股関節屈筋群の起始・停止・作用
股関節屈筋群は股関節前面にある股関節屈曲の主動筋群です。
股関節屈曲を担う筋は多数あります。
主要な股関節屈筋群の起始、停止、作用は下記の通りです。
名称 | 起始 | 停止 | 作用 |
---|---|---|---|
大腰筋 | 第12胸椎-第5腰椎椎体前面外側 第1-5腰椎横突起 | 大腿骨小転子 | 股関節屈曲・外旋 |
腸骨筋 | 腸骨上縁 腸骨窩 | 大腿骨小転子 | 股関節屈曲・外旋 |
大腿直筋 | 下前腸骨棘 寛骨臼上縁棘 | 脛骨粗面 | 股関節屈曲 膝関節伸展 |
大腿筋膜張筋 | 上前腸骨棘 | 脛骨Gerdy結節 | 股関節屈曲・外転 膝関節伸展 |
縫工筋 | 上前腸骨棘 | 脛骨粗面内側 (鵞足) | 股関節屈曲・外転・外旋 膝関節屈曲・内旋 |
大腿筋膜張筋は、腸脛靭帯や大腿筋膜を緊張させる作用を持つと言われています。
上記のほか、薄筋や長内転筋などの内転筋群も屈曲の作用を持っています。
大腿直筋や腸腰筋の機能評価については下記の記事で紹介しています。
また、ベースの考え方であるMMTや筋タイトネステストについては下記リンクを参考にして下さい。
大腿筋膜張筋の評価
大腿筋膜張筋は腸腰筋と同様に強力な股関節屈曲筋です。
しかし、筋力や柔軟性を評価するためには他の股関節屈曲筋に配慮しなければなりません。
そのため、できる限り大腿筋膜張筋を単独で力発揮できるように工夫が必要です。
大腿筋膜張筋の筋力評価
検査側の下肢を上にして側臥位になります。
検査側の股関節を内旋および、やや(10~20°程度)屈曲位にし、上に持ち上げます(外転)。
この時に股関節前外側部あたりに大腿筋膜張筋が収縮するのを感じます。
挙上した下肢を股関節伸展・内転・内旋方向に抵抗をかけ、抵抗する力の強さで評価します。
中殿筋の代償に注意
大腿筋膜張筋には股関節の外転作用もありますが、股関節屈曲と同時に力を発揮しないと中殿筋も強く収縮します。
また、股関節屈曲位でなければ(伸展位だった場合)大殿筋も動員されることもあります。
これらの筋の代償を除外するためにも、股関節屈曲位・外転・内旋を同時に力発揮できるよう誘導してあげましょう。
大腿筋膜張筋の柔軟性評価
検査側の下肢を上にした側臥位になります。
この時、過度な骨盤前傾を押さえるために、被検者に非検査側の膝を抱えてもらっておくと良いでしょう。
検査側の膝関節を90°ほど屈曲させ、股関節をやや外旋(膝が外側を向く方向に回旋)させ、後下方に向けて他動的に牽引します。
十分に伸展・内転・外旋位がとれれば、股関節前面外側あたりが伸張されます。
「伸張による痛み」が感じられたポイントを評価として記録します。
この方法はオーバーテスト(Ober’s Test)とも呼ばれ、腸脛靭帯に掛かっている過度な緊張を評価する方法としても使われています。
大腿筋膜張筋の機能低下
前述の通り、大腿筋膜張筋は腸脛靭帯や大腿筋膜の緊張をコントロールしています。
長時間立ちっぱなしであったり、長時間歩いたり走ったりすると、過度に使われます。
腸脛靭帯は脛骨外側顆(Gerdy 結節)に付着しており、筋タイトネスが高まると腸脛靭帯炎を発症することもあります。
腸脛靭帯炎は、ランナー膝(runner’s knee)とも呼ばれ、一定期間練習を中止しなければ治りにくいスポーツ障害のため注意が必要です。
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