ゼロポジション(Zero-position)とは
ゼロポジション(Zero-position)は肩甲骨関節窩の方向に上腕骨の長軸が一致する位置です。
関節軸が解剖学的軸と一致する力学的位置として認識されています。
1957年にSahaによって初めて説明された肩関節の肢位です。
ローテーターカフの軸が一直線
この肢位では、すべての回旋筋(ローテーターカフ:棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の軸が一直線に並び、肩関節の安定に作用します。
スキャプラプレーン(Scapla plane:肩甲骨面)とは
図は立位姿勢を上から見ています。(上が前、下が後ろ)
この関節窩が向いている方向をスキャプラプレーン(Scapla plane:肩甲骨面)と呼びます。
通常の立位姿勢では、スキャプラプレーンは30-45°程度前方を向いています。
この面上に上腕骨が動くと肩甲上腕関節(いわゆる肩関節)が安定します。
ゼロポジションもこのスキャプラプレーン上にあります。
ゼロポジションの見つけ方
ゼロポジションは、肩甲骨が上方回旋し、上腕骨が前方へ挙上した状態で見つけられます。
個人差はありますが、下記の肩関節角度の肢位で見つけられます。
- 外転 135-165°
- 前方(水平屈曲) 30-45°
真横から見ると、上肢の位置はやや前方にあります。
肩甲骨内転位のゼロポジションは低い
肩甲骨内転位(肩甲骨が胸椎に最も近い状態)では、スキャプラプレーンは上肢(腕)を真横に挙上した面(前額面上)となります。
肩甲骨内転位では、30°を超える外転時に肩甲骨の上方回旋が制限されます。
これにより、外転角度が約105°になるとゼロポジションに到達するといわれています。
- 外転 105°
- 前方・後方 0°
これより下がると「肘下がり」
野球のピッチャーはこの角度を利用してる選手がほとんどです。
投球フェーズの中では、後期コッキング期でこの状態に挙上し、加速期→リリース→フォロースルーとこのゼロポジションを保ちます。
このゼロポジション肢位がとれないと、いわゆる肘下がり。
特に、加速期で肩関節の最大外旋位(MER:Maximum External Rotation)がとれずに投球障害(肩・肘)のリスクが高まります。
なぜゼロポジションが真横になる?
図のように肩甲骨内転位姿勢では、肩甲骨関節窩は外側(真横)を向きます。
そのため、水平面上でのゼロポジションはより後方に位置することになります。
ショルダーパッキングではもっと低い?
ショルダーパッキングは、肩甲骨の内転・下制位です。
この肢位では肩甲骨の内転に下制が加わる影響で、もう少し低い肢位でゼロポジションに到達する可能性があります。
これによりショルダーパッキングが上手にできていると、ベンチプレスやプッシュアップの肢位もゼロポジションとなる可能性があります。
競技動作でのゼロポジション
野球のリリース、バレーボールのサーブやアタックの打点、テニスのサーブやスマッシュの打点などは、肩関節に強い負荷が掛かります。
ゼロポジションは4つの回旋筋の作用軸が一致する肢位であり、最も動的(筋の作用による)支持機構が働く肢位になります。
競技動作のリリースや打点でゼロポジションができていることにより、肩関節が安定して最も強い力を発揮できます。
裏を返せば、このポイントでゼロポジションでない場合は、肩関節が不安定になり、肩を痛めるリスクが増加します。
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