はじめに
野球の投手にとって、正しいフォームはパフォーマンス向上やケガ予防の鍵を握ります。
しかし、多くの選手が意識しないうちに悪いフォームで投球してしまい、ケガのリスクが高まっているのが現状です。
ここでは、避けるべき投球フォームについて説明し、その改善方法もご紹介します。
あなたのフォームが正しいかどうか、ぜひチェックしてみてください!
避けるべき投球フォームが及ぼす影響
投球フォームが悪いと、肩や肘に余分な負担がかかり、肘の靭帯損傷や肩のインピンジメント症候群といったケガの原因となります。
また、フォームが崩れることで球速が落ちたり、コントロールが不安定になり、パフォーマンスにも悪影響を与えます。
以下に、典型的な避けるべき投球フォームを説明し、それぞれの問題点を詳しく解説します。
肘が下がる
肘下がりとは、投球時に投球側の肘が両肩のラインよりも下がってしまうフォームのことです。
肘が下がるとゼロポジションを保持できずに、肩関節の十分な外旋可動域が確保できません。
力の伝達が不十分:肘が下がると、下半身から伝わる力がボールにうまく伝わりません。これにより球速や球威が低下し、投球の威力が十分に発揮されません。
肩や肘の過度な負担:肘下がりにより、肩や肘の角度が不自然になりやすく、負担が集中します。肘の内側(内側側副靭帯)に特にストレスがかかるため、痛みや炎症が生じやすくなります。
改善ポイント:後期コッキング期からリリースにかけて、肘が肩のラインと同じ高さになるよう意識することが重要です。肩の柔軟性を向上させるストレッチや筋力を鍛えるトレーニングも有効です。
肘の突き出し
肘の突き出しとは、投球時に肘が体の前方に出てしまうフォームのことです。
十分に胸を張る(肩甲骨を内転させる)ことができないことによる問題です。
肩や肘の過度な負担:肘が前に出ると、肩甲骨と肩の連動が崩れ、肘や肩に過剰な負荷がかかります。これにより、肘関節や肩の腱板にダメージを与え、ケガのリスクが増します。
スムーズな動作が困難:肘を突き出すことで、腕全体の流れがスムーズでなくなり、下半身から上半身への力の伝達が途切れがちです。
改善ポイント:肘の位置を体に沿わせ、肩甲骨と連動する形を意識しましょう。肩甲骨内転位を保持し胸を張ることにより、突き出しの矯正に繋がります。
体の開きが早い
体の開きが早いとは、投球動作中に上半身が早く開いてしまうフォームのことです。
「力み」や「グローブの引きが強すぎる(早すぎる)」場合にも発生します。
力がボールに伝わらない:体が開きすぎると「手投げに」なり、ボールに力を伝えにくく、球速や球威が低下します。また、コントロールも不安定になりやすいです。
肩や肘への過度な負担:体が開くことで、肩や肘が不自然に引っ張られる形となり、過剰な負荷がかかります。特に、肩の腱板や肘関節に大きなストレスが生じやすいです。
改善ポイント:踏み込み足が地面に着いたタイミングで体が開き始めるように意識しましょう。また、下半身と上半身の動きを一体化させる練習も有効です。
後ろ重心
後ろ重心とは、投球時に体重が後ろ足(軸足)に残りすぎてしまうフォームのことです。
力の伝達不足:体重が後ろに残ると、ステップ脚への体重移動が不足し、下半身の力を十分に活かせません。これにより、ボールに力を伝えられず、球速や球威が低下します。
ケガのリスク増加:後ろ重心では、腕だけで投げる形になるため、肩や肘に負担が集中します。特に、肩の腱板や肘の靭帯への負荷が大きくなり、ケガの原因となりやすいです。
改善ポイント:投球時にステップ脚にしっかりと体重を移動させる意識を持ちましょう。重心移動の感覚を養うために、壁を利用した投球練習もおすすめです。
まだある「避けるべき投球フォーム」
逆W(インバーテッドW)フォーム
逆Wフォームとは、投球時に両腕が逆向きの「W」を描くように構えるフォームです。
どちらかといえば「M」字に近い形になります。
肩関節がスムーズに動かないため、肘や肩への負担が大きくなり、肩のインピンジメントや内側側副靭帯の損傷を引き起こす可能性があります。
このフォームを改善するには、肩と肘の位置を常に肩のラインに合わせ、スムーズな肩甲骨の動きを意識しましょう。
ステップ脚が接地する瞬間には、投球側の手が肩くらいの位置まで挙がっていることを目安としましょう。
これが遅れることにより逆Wフォームとなりやすい傾向があります。
リリースポイントのバラツキ
リリースポイントが安定しないと、投球のコントロールが悪くなり、肩や肘に無理な力がかかります。
この問題はフォームの反復練習で改善できます。
安定したリリースポイントを身につけることで、コントロール力が向上し、肩や肘への負担が軽減されます。
体の回転不足
投球時に体幹をしっかりと回転させないフォームも、避けるべき典型的なフォームです。
体の回転不足は、下半身の力がボールに伝わらず、肩や肘だけで投げる形になるため、ケガのリスクを高めます。
正しい体の回転を習得するには、下半身と体幹を連動させる意識が大切です。
投げ急ぎ
フォームが安定する前に急いで投げると、力を十分に発揮できず、肩や肘に負担が集中します。
特に、リリース前の準備不足によって、ケガのリスクが高まります。
リズムを意識した投球練習を取り入れて、フォームが整うまで落ち着いて動作することがポイントです。
オーバーストライド(ストライド幅が広すぎる)
ストライドが広すぎると、リリースポイントが安定せず、体のバランスが崩れます。
結果として、肩や肘に余分な負担がかかり、球速やコントロールにも悪影響が出ます。
自分に合ったストライド幅を確認し、バランスの良いフォームを目指しましょう。
フォーム改善のための練習方法
- 安定したリズムで投げる:一貫性を保つことで、フォームが安定し、体への負担が軽減されます。
- 鏡やビデオでフォームを確認:自分のフォームを客観的にチェックし、改善点を見つけましょう。
- コーチやトレーナーの指導を受ける:専門家のアドバイスは正しいフォームを習得するために重要です。
- 筋力改善のエクササイズ:肩関節や肩甲骨周囲の筋力は、関節の安定性や滑動性に寄与します。
- 柔軟性を高めるストレッチ:肩関節や股関節の柔軟性を高め、スムーズな体の動きを実現します。
まとめ
避けるべき投球フォームは、肩や肘に大きな負担をかけ、ケガの原因となります。
「肘下がり」「肘の突き出し」「体の開きが早い」「後ろ重心」のみならず、逆Wフォーム、リリースポイントのバラツキ、体の回転不足、開きが早い、投げ急ぎ、オーバーストライドなどは避けるべき典型的な悪いフォームです。
正しいフォームを身につけることで、パフォーマンス向上とケガ予防を目指しましょう。
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