この記事は、大腿四頭筋の筋力・柔軟性評価についてアスレティックトレーナー・医療従事者を目指す学生や初学者向けに書かれています。
大腿四頭筋の起始・停止・作用
大腿四頭筋は大腿前面にある膝関節伸展の主動筋です。
大腿四頭筋はその名の通り、4つの筋から構成されています。
それぞれの起始、停止、作用は下記の通りです。
名称 | 起始 | 停止 | 作用 |
---|---|---|---|
内側広筋 | 大腿骨粗線内側唇 | 脛骨粗面 | 膝関節伸展 (下腿内旋) |
外側広筋 | 大腿骨粗線外側唇 | 脛骨粗面 | 膝関節伸展 (下腿外旋) |
中間広筋 | 大腿骨体前面 | 脛骨粗面 | 膝関節伸展 |
大腿直筋 | 下前腸骨棘 寛骨臼上縁 | 脛骨粗面 | 股関節屈曲 膝関節伸展 |
4つの筋は全て膝蓋骨で合流し、膝蓋靱帯(腱)を介して脛骨粗面に停止しています。
一部は膝蓋骨に付着せず、膝蓋骨を覆う形で合流し膝蓋靱帯となり脛骨粗面に停止するものもあります。
基本的には全て膝関節伸展の作用を持っているため、それぞれの筋を別々に評価することは難しいですが、内側広筋と大腿直筋は、特異的に評価する方法があります。
ベースの考え方であるMMTや筋タイトネステストについての解説は下記リンクを参考にしてください。
内側広筋の評価
内側広筋は膝関節伸展位に近いところで力を発揮します。
膝関節の関節可動域でいうと30~0°付近です。
内側広筋の筋力評価
座位(下腿下垂位)にて、大腿前面の膝蓋骨内側上方部(経穴では血海付近)に触れながら、膝関節軽度屈曲位から伸展するように筋力発揮をすると、完全伸展位に近づくにつれて筋が収縮するのを感じます。
この時に、股関節はやや外旋気味の方が内側広筋に力が入りやすい傾向があります。
徒手的に屈曲方向に抵抗をかけ、抵抗する力の強さで評価します。
下腿の内旋作用もありますが、膝関節屈曲位での下腿の作用に限定されています。
膝関節伸展位付近では内側側副靭帯や外側側副靭帯の緊張が高まるためほとんど作用できません。
内側広筋の柔軟性評価
仰臥位の膝立て位にします。
下腿外旋させたまま膝関節を屈曲させていきます。
ゆっくりと屈曲させていき、大腿前面内側部の伸張を確認します。
内側広筋の機能低下
膝関節伸展や下腿内旋といったの作用のほか、膝関節の安定性や、膝蓋骨の牽引方向をコントロールにも寄与しています。
膝関節の疾患において、内側広筋の筋力低下はリコンディショニングの進行の妨げになります。
大腿直筋の評価
大腿直筋は、大腿四頭筋の中で唯一股関節をまたぐ筋です。
つまり、他の3筋は単関節筋ですが、大腿直筋だけは多関節筋ということです。
大腿直筋の筋力評価
座位(下腿下垂位)にて、大腿前面中央部やや近位に触れておきます。
股関節軽度屈曲位(座面から大腿後面がやや浮く程度)から膝関節伸展するように筋力発揮をします。
すると大腿前面中央部の筋が収縮するのを感じます。
徒手的に股関節伸展・膝関節屈曲方向に弱い抵抗をかけ、抵抗する力の強さで評価します。
大腿直筋の柔軟性評価
伏臥位で他動的に片方ずつ膝関節をゆっくりと屈曲させます。
大腿前面の伸張による痛みが出たポイントで踵と殿部の距離を計測します。
これを踵殿間距離(HBD:heel-buttock distance)といいます。
屈曲する過程で、同側の股関節が屈曲して殿部が上がる「尻上がり現象」がみられた場合は、代償動作が出はじめたポイントも記録します。
これはエリーテスト(Ely’s test)と言って、大腿直筋の筋タイトネステストで用いられます。
大腿直筋の機能低下
大腿直筋の持つ強い股関節屈曲と膝関節伸展作用は、ランニング時のリカバリー(脚を前に振り戻す)フェーズや、前方方向のスプリントからの急激な減速動作に使われます。
あらゆる競技動作において、大腿直筋の筋力低下はパフォーマンスの妨げになります。
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