この記事は、ROMについてアスレティックトレーナーや医療従事者を目指す学生や初学者向けに書かれています。
ROMは関節可動域
ROM(アール・オー・エム)とは、Range of Motionの略称です。
日本語訳すると関節可動域です。
柔軟性の指標の一つ
ROMは柔軟性の指標の一つです。主に単関節の可動域を評価します。
一般的に、解剖学的立位姿勢(回外肢位)をベース(0°)とし、関節角度計を使って5°単位で評価します。
MMTを頻繁に用いる時期
リハビリテーションやリコンディショニングにおいて、ROMの頻出時期は初期段階です。
主に理学療法士が行うメディカルリハビリテーションの時期に用いられることがほとんどです。
患部に関してはMMTよりも先に行うことが多いです。
コンディション不良の評価にも用いる
スポーツ現場ではスポーツ外傷・障害による後遺症や、コンディション不良の原因の一つとして可動域制限があります。
その際は、ROMを用いて局所の可動域低下を評価します。
ROMによって可動域制限が起こっている関節を特定し、ファンクショナルトレーニングやコレクティブエクササイズなどの方法を用いて可動域を回復・拡大させることにより、後遺症やコンディション不良を改善させます。
ROMは「関節」を対象とした評価法
ROMで評価できる可動域は関節です。
筋の伸張性をみる際に行う筋タイトネストに似ていますが、筋が伸張されない肢位で行うのが原則です。
多関節筋による伸張制限をできるだけ排除する必要があります。
具体的には下記のような肢位に配慮します。
計測部位 | OK肢位 | NG肢位 | 配慮すべき筋 |
---|---|---|---|
膝関節屈曲ROM | 股関節屈曲位 例)座位、仰臥位 | 股関節伸展位 例)伏臥位 | 大腿直筋の伸張制限を排除する |
膝関節伸展ROM | 股関節伸展位 例)仰臥位 | 股関節屈曲位 例)座位 | ハムストリングスの伸張制限を排除する |
大腿直筋は下前腸骨棘より起始しているため、股関節と膝関節をまたぎます。
作用に股関節の屈曲、膝関節の伸展をもちます。
大腿直筋が硬いと伏臥位のような股関節伸展位の場合、膝関節を屈曲させていくと大腿直筋により膝関節屈曲が制限されて、正しい膝関節屈曲ROMを評価することができません。
大事な点は「筋の伸張による可動域制限の影響を極力なくす」ということです。
原則として他動運動で計測する
原則として他動運動による計測をして評価します。
検者は関節角度計を片手で操作し、もう一方の手で被検者の関節運動の最終点を確認し、角度計をかざして計測します。
計測の際、被検者は脱力をしておきます。
自動運動を計測する評価方法もありますが、その場合は「自動」、「Active」などの明記をしておきます。
ROMの手順
ROMの手順は下記の通りです。
- 被検者に自動運動で関節を動かしてもらいます
- 自動運動の際に痛みや違和感がないかを被検者に確認します
- 最終運動域で止め、検者が遠位部を手で支え、「手で支えていますので力を抜いてください」と説明して力を抜いてもらいます
- 止めた肢位よりも少し押し込んで、最終域感(抵抗感)があることを確認し、その際に痛みや違和感がないことを確認します
- 基本軸と移動軸に関節角時計を添えて、関節角度を計測します
- 被検者を元の肢位(リラックスした姿勢)に戻した後、関節角度計を目視して角度を確認します
最終域感
最終域感とは「痛みの出現」や「測定時の他動運動に対する抵抗感の増加」のポイントです。
関節によって独特の最終域感を感じます。
骨性
肘伸展時に感じるような、骨と骨とが衝突する抵抗感。
軟部組織の接触
膝関節屈曲時に感じる、大腿後面と下腿後面の筋肉の接触による抵抗感。
筋の伸張
足関節の背屈時に感じる、筋の伸張による抵抗感。
関節包の伸張
中手指節間関節の伸展時に感じる、関節包の伸張による抵抗感。
靭帯の伸張
手関節の橈屈時に感じる、靱帯の伸張による抵抗感。
メリットは関節可動域を共通認識できること
膝関節伸展 -10°
この情報を見たときに「この人の膝関節は伸展制限がある」と瞬時に判断ができます。
ROMは国際基準であるため、選手のリハビリテーションの進捗状況を情報を、海外のメディカルスタッフと共有する際には便利です。
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