腹圧と腹腔内臓器
腹圧とは、腹腔内圧のことです。
腹腔は体幹部の下部に位置し、上は横隔膜、前後左右は腹壁、下部は骨盤や骨盤底筋に覆われています。
腹腔内臓器があり、小腸や大腸といった(消化管)中空性臓器や、肝臓、腎臓、膵臓といった実質性臓器も収められています。
これらの腹腔内臓器には、骨や筋のように体幹部を支持したり、積極的に動かす機能はありません。
肺が紙風船のようなイメージであれば、腹腔内臓器は水風船のようなイメージです。
ひと昔前までは、この腹圧(腹腔内圧)を計測するために、肛門から圧力センサーを挿入して圧力を計測する実験が行われていたようです。
しかし、現在は研究倫理上、このような人体に影響を及ぼす実験は行われていません。
では、なぜ腹圧が大事なのでしょうか。
腹式呼吸と腹腔内臓器
腹式呼吸を視覚的に捉えるために四肢(上肢と下肢)を除いたトルソーモデルです。
腹式呼吸とは、吸うときにお腹を膨らませ、吐くときにお腹を凹ませる呼吸のことです。
原則として、胸郭を動かす呼吸(胸式呼吸)と区別して行います。
横隔膜は体幹部の真ん中(胸部と腹部の境界線)に位置しています。
吸気時には、横隔膜が収縮するとともに肺が広がり、同時に腹腔内臓器は腹壁に押し出されるようにしてお腹が膨らみます。
呼気時には、横隔膜が弛緩し、腹部の筋を収縮させることにより肺が圧迫され、腹腔内臓器は前後左右の腹壁より圧迫を受けて、お腹が凹みます。
ブレイシングとドローイン
ブレイシング(Bracing)もドローイン(Draw-in)も努力呼吸(通常よりも大きな呼吸)による腹式呼吸により意識がしやすくなります。
ブレイシング Bracing
ブレイシングは吸気時に、お腹を大きく膨らませます。
この時に、腹壁の前方だけでなく、側方(肋骨下縁と腸骨稜の間)や後方(脊柱起立筋の外側)も使って強くお腹を膨らませるイメージです。
高重量のウエイトトレーニングをする際のバルサルバ法(息を大きく吸って止める努責)が典型例です。
お腹を膨らませないブレイシング
実際にはお腹を膨らませない(腹部を平坦に保つ)ブレイシングも存在します。
代表的な例として、排便時やボクシングのボディーブローを受ける時などのお腹の力を入れ方が、お腹を膨らませないブレイシングの動きです。
ドローイン Draw-in
ドローインは、呼気時にお腹を強く凹ませて、腹横筋の収縮により肺に残った空気を強く押し出します。
腹横筋は、腹圧を高めるのが主な作用ですが、咳やくしゃみ、笑っている時などにもよく使われます。
腹圧が弱いと姿勢が悪くなり腰痛に
腹圧が弱まったり、機能しなかったりすると、姿勢が悪くなり、腰痛の原因になります。
反り腰タイプは一見姿勢は良いように見えますが、下っ腹がぽっこりと膨らんでいます。
反り腰タイプを放置すると筋筋膜性腰痛(非特異性腰痛)や、腰椎分離症、腰椎すべり症、腰椎椎間板ヘルニアなどの腰痛症の発症リスクが高まります。
猫背タイプは、背中全体が丸くなり、巻き肩になります。
腹筋群が短縮し、放っておくと姿勢をまっすぐにできなくなり、肩凝りや首の凝り、五十肩の原因にもなります。
腰椎椎間板症や椎間板ヘルニア、骨粗鬆症を合併すると腰椎圧迫骨折などの腰痛症の発症リスクが高まります。
姿勢改善・腰痛予防に
ブレイシングやドローインは、腹圧を高めるには最適なエクササイズです。
腹圧が高まることにより体幹部が安定し、腰椎や脊柱起立筋に依存せず、腹腔内臓器を支柱として使うことができるようになります。
ぜひ、実践してみてください!
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