アスレティックトレーナーのワークライフバランスを考える①崩れる理由と立て直しの考え方

アスレティックトレーナーのワークライフバランスを考える スポーツ現場
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なぜ「自分の工夫」だけでは限界が来るのか

「シーズン中は仕方ない」「現場が優先」と思って走り続けた結果、気づけば休みが取れない、連絡が途切れない、家族や学業・自己研鑽が後回し……。

これは“甘え”や“気合い”の問題ではなく、アスレティックトレーナー(以下、AT)の働き方が「そうなりやすい構造」を持っているから起こります。

NATA(National Athletic Trainers’ Association:全米アスレティックトレーナー協会)のポジションステートメントは、ワークライフバランス(以下、WLB)を「個人の努力で何とかする話」にせず、組織(チーム運営・管理者)と個人(AT本人)の両面から改善策を示しています。

National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Facilitating Work-Life Balance in Athletic Training Practice Settings

この記事でわかること
  • ATのWLBを語る時に必要な基本用語
  • 部活動からプロで共通して起きる「WLB崩壊のメカニズム」
  • 立て直しの軸は「バランス」だけでなく「好循環(エンリッチメント)」である理由
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WLBを理解するための4つのキーワード

事前に4つのキーワードを押さえると、「自分は何が起きているのか」が整理しやすくなります。

ワーク・ライフ・バランス(WLB)

仕事と私生活(家庭、学業、趣味、休養など)の役割を、無理なく両立できている状態を指します。

NATAは、WLBを「仕事と生活の時間配分」だけでなく、役割間の関係性として捉える重要性を示しています。

ワーク・ファミリー・コンフリクト(WFC)

仕事の要求が強すぎて、家庭・私生活の役割が果たしにくくなる状態です(逆方向もあります)。

ATは勤務時間の長さや不規則さ、移動、突発対応でWFCが起きやすいと説明されています。

ワーク・ファミリー・エンリッチメント(WFE)

仕事で得た経験や資源が家庭・私生活を良くし、逆に私生活の充実が仕事の質を高める「相乗効果」の考え方です。

NATAは、WLBを“削り合い”ではなく、この好循環まで視野に入れて設計することを重視しています。

バーンアウト(燃え尽き)

慢性的ストレスによって心身が消耗し、意欲や達成感が落ちたり、対人対応がつらくなったりする状態です。

AT領域でもバーンアウトに関する研究が蓄積しており、原因・影響・関連要因がレビューされています。

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ATのWLBが崩れやすい「5つの構造」

NATAは、ATのWLB低下に関連しやすい要因として、個人よりもまず「組織・職場環境(勤務時間、スケジュール設計など)」の影響が大きいことを繰り返し強調しています。

日本のスポーツ現場に置き換えると、主に次の5つが重なりやすいです。

拘束時間が伸びやすく、休みが確定しにくい

練習帯、試合帯同、遠征、移動、救護対応、さらに記録や連携などの現場外業務が重なると、終業時刻が読めなくなります。

時間が読めない働き方は、私生活の予定が立てられず、回復が後ろ倒しになりやすいのが問題です。

ATは選手対応だけでなく、事務作業や学生指導、移動も含めて負担が増えると言われています。

連絡ツールの便利さが境界線を溶かす

LINEやメッセージアプリが主流になると、「返信できる=対応すべき」という空気が生まれます。

NATAは、仕事から離れる時間(ディスエンゲージ)を意図的に確保する重要性を強調しています。

緊急時の連絡は必要ですが、緊急の定義がないと、すべてが緊急になります。

役割が増えやすい(仕事が終わらない)

ATの仕事は、テーピングや評価だけではありません。

復帰プログラム、負荷管理、指導者・保護者対応、医療機関との連携、学生スタッフの教育、書類作成などが“追加”されやすく、気づけば担当範囲が無限に広がります。

この「役割の増殖」は、WLBを崩す大きな推進力になります。

人手不足・単独配置で「代替」が効きにくい

「あなたがいないと回らない」は、現場の信頼の裏返しでもありますが、休暇・研修・体調不良がすべてリスクになります。

NATAは、組織的支援や体制(人員配置、ジョブシェア等)を含めてWLBを促進すべきだとしています。

積み重なってバーンアウトと離職意向につながりやすい

バーンアウトに関するシステマティックレビューでは、ATにおけるバーンアウトの要因や影響(職務満足度、離職など)が整理されています。

ここで大事なのは、「個人が弱いから燃え尽きる」のではなく、構造が続くと誰でも危険水域に近づくという視点です。

「バランス」だけでなく「好循環」を狙う

WLBの話は、どうしても「仕事を減らしたい」に聞こえがちです。

そこで役立つのがWFE(相乗効果)の考え方です。

例えば、私生活の回復が判断力や対人対応を支え、結果として現場の安全性が上がる。

仕事の経験がコミュニケーション力や問題解決力として家庭にも還元される。

こうした「循環」を前提にすると、チーム運営側とも同じ言語で話しやすくなります。

まとめ

  • ATのWLBは崩れやすい“構造”があり、個人の努力だけでは限界をきたしやすい
  • 立て直しは、組織(制度・運用・文化)と個人(境界線・交渉・回復)の両輪で考える
  • 「バランス」だけでなく、WFE(仕事と生活の相乗効果)まで視野に入れると回り始める
スポーツ現場
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