ドゥケルバン病の保存療法|腱鞘炎の最新の治療アプローチと効果

ドゥケルバン病の保存療法|腱鞘炎の最新の治療アプローチと効果 スポーツ外傷・障害
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はじめに

De Quervain病(ドゥケルバン病)は、親指を動かす腱(長母指外転筋と短母指伸筋)の炎症によって引き起こされる腱鞘炎の一種です。

手首の親指側に痛みや腫れを伴い、特に物をつかむ動作や手首を回す動作で悪化します。

本記事では、De Quervain病の最新の保存療法に焦点を当て、その有効性について解説します。

De Quervain’s Disease: A Discourse on Etiology, Diagnosis, and Treatment(外部リンク)

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保存療法の選択肢

医療機関でドゥケルバン病と診断されると、ステロイド注射による治療と保存療法が行われることが一般的です。

6ヵ月間行っても症状が改善しない場合など重度の患者には、第一伸筋区画の開放術などの外科的治療法が選択肢に含まれます。

保存療法では、物理療法、運動療法、装具療法、薬物療法、先進的な保存療法が用いられます。

超音波療法

高周波の音波を用いて、組織の伸展性を高め、痛みを軽減し、腱や骨の治癒を促進します。

特に3MHzの周波数が浅い構造に適しており、ドゥケルバン病の治療に用いられます。

ただし、急性の炎症や手術後6週間以内の腱修復患者には禁忌とされています。

運動療法

痛みや腫れが軽減した後、長母指外転筋と短母指伸筋の腱の滑走を促進するための可動域(ROM)エクササイズを行います。

最初は等尺性運動から始め、徐々に自動運動を伴う可動域訓練へと進めます。

キネシオテーピング

キネシオテープを適切に配置することで、組織間の圧力を解放し、炎症を軽減します。

筋肉の起始から停止に向けてテープを貼ることで、筋収縮を抑制し、痛みの軽減が期待できます。

現代的なアプローチ

フォノフォレーシス

超音波を使用して、抗炎症薬を皮膚から深部組織へ浸透させます。

これにより、炎症や浮腫、瘢痕組織、痛みの軽減が期待できます。

慢性的な使い過ぎによる腱障害や狭窄性腱鞘炎の患者に有効とされています。

イオントフォレシス

電流を用いて、抗炎症薬を皮膚から浅い部分に浸透させます。

手や足の浮腫、炎症、瘢痕組織、痛みの軽減に役立ちます。

慢性的な使い過ぎによる腱障害や狭窄性腱鞘炎の患者に有効とされています。

グラストンテクニック

特殊な器具を用いて、軟部組織に微小な外傷を与え、組織の可動性と再生を促進します。

これにより、組織のリモデリングが促され、痛みの軽減や機能の回復が期待できます。

鍼治療

メチルプレドニゾロン酢酸エステル注射(一般的なステロイド注射よりも強く長い抗炎症作用をもつ注射)と鍼治療を比較した研究によると、注射による治療成功率は鍼治療よりもやや高いものの、鍼治療もドゥケルバン病の治療法として検討可能であると示唆されます。

Quick DASHスコア注射群鍼治療群
治療前61.2±15.764.4±15.1
6週間後6.1±8.59.8±9.9
Quick Disabilities of the Arm, Shoulder, and Hand(Qick DASH)スコア:上肢の機能障害を評価する指標
VASスコア注射群鍼治療群
治療前6.7±1.87.1±1.6
6週間後1.2±1.62.1±2.1
Visual Analogue Scale(VAS)スコア:痛みの強さを評価する指標

この論文では、注射群ではメチルプレドニゾロン酢酸エステル(40 mg)を手首の第1背側コンパートメント(橈骨茎状突起の近く)に1回注射しています。

一方、鍼治療群は、LI-5(陽渓)、LU-7(列欠)、LU-9(太淵)および阿是穴(反応点)に30分間の鍼治療を1週間で計5回、各セッション30分間行っています。

Efficacy of Acupuncture versus Local Methylprednisolone Acetate Injection in De Quervain’s Tenosynovitis: A Randomized Controlled Trial(外部リンク)

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日常生活での注意点

治療効果を高め、再発を防ぐためには、日常生活で以下の点に注意することが推奨されます。

手首や親指の過度な使用を避ける

特に、重い物を持つ際には、手ではなく肩や腕を活用するよう心掛けましょう。

適切な休息を取る

長時間の手作業やパソコン作業の際には、定期的に休憩を取り、手首や親指を休ませることが重要です。

ストレッチやエクササイズ

専門家の指導のもと、手首や親指の柔軟性を高める運動を取り入れることで、症状の予防や改善に役立ちます。

保存療法の効果と限界

保存療法は、痛みの緩和や症状の軽減に一定の効果が認められていますが、完全な治癒には個人差があります。

特に、コルチコステロイド注射は即効性がありながらも再発率が一定数報告されており、長母指外転筋と短母指伸筋の腱の解剖学的変異が影響することが分かっています。

テスト方法

ドゥケルバン病のテスト法として、「フィンケルシュタインテスト」と「アイヒホッフテスト」の2種類があります。

2種類のテスト方法はいくつかの文献で混同されてきましたが、その手順が異なります。

フィンケルシュタインテストの手順

  • 患者に自動的に手関節を尺屈するように指示する
  • 検者は患者の尺屈した手の母指を他動的に屈曲させる

アイヒホッフテストの手順

  • 患者に母指を四指で握るように指示する
  • 検者は患者の母指を握った手を他動的に尺屈させる

陽性所見

長母指外転筋腱と短母指伸筋腱を触診し、腱の上で動く結節、腱の擦れ、またはポップ音がないか確認しながら、特異的な痛みが出た(または増悪した)場合を陽性とします。

フィンケルシュタインテストの方が優れている

研究によると、フィンケルシュタインテストは、アイヒホッフテストと比較してより高い特異性を示し、偽陽性の結果の数が大幅に少なく、患者に与える不快感も大幅に少なかったということが示されています。

Finkelstein’s Test Is Superior to Eichhoff’s Test in the Investigation of de Quervain’s Disease(外部リンク)

まとめ

ドゥケルバン病に対する保存療法は、物理療法、スプリント固定、薬物療法を中心に進められます。

特にコルチコステロイド注射は第一選択となりますが、痛みの再発を防ぐためには、適切な運動療法や先進的な治療法の組み合わせが重要です。

症状が持続する場合は、早期に医師に相談し、適切な治療方針を決定することが推奨されます。

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