足関節捻挫は「見た目」より「順序」が大事
足関節捻挫は頻度が高い一方、骨折や高位足関節捻挫(シンデスモーシス損傷)が紛れることがあります。
しかも、腫れの大きさは自己申告の機能と相関しにくいため、第一印象だけで重症度を決めるのは危険です。
- 受傷直後にまず確認すべき問診・観察・触診のポイント
- 徒手検査(前方引き出しなど)の「限界」と実施タイミング
- オタワ足関節ルールでX線の要否を判断するコツ
- 急性期(~数日)の介入:何が効きやすく、何は根拠が弱いか
今回の内容は下記論文を参考にしています。
足関節捻挫の初期評価「3ステップ」
①問診(既往・機転・荷重)
既往歴:過去の捻挫は再発の代表的なリスク要因です。
受傷機転:外側捻挫は典型的に内反+底屈(足部内転や下腿回旋も絡む)で、前距腓靭帯(ATFL)が最も損傷されやすいと整理されています。
荷重可否:受傷直後に4歩歩けたかは、骨折除外(後述)にも直結します。
②観察(変形・腫脹・皮下出血)
明らかな変形は骨折・脱臼を疑いますが、変形がない骨折もある点に注意します。
腫れの部位は受傷直後ほどヒントになりやすい一方、腫れの「大きさ」そのものは機能と一致しにくいとされています。
③触診+ROM(可動域)
靭帯の圧痛は損傷構造の推定に役立ちますが、靭帯の連続性は徒手検査で別途評価します。
ROMは「他動・自動・抵抗下」をそろえて評価します(筋腱損傷、疼痛による筋抑制、関節内病変の示唆など)。
徒手検査は「早いほど正確」とは限らない
前方引き出しテスト(ATFL評価)は感度の報告に幅があり、受傷48時間以内より5日後のほうが感度・特異度が高いという知見があります。
受傷直後は「骨折・高位損傷の除外」を優先し、腫れと痛みが落ち着くタイミングで不安定性を再評価すると安全です。
画像検査
救急では足関節外傷の多くでX線が撮られますが、骨折は一部です。そこでオタワ足関節ルール(OAR)が不要な撮影を減らす目的で広く検証されています。
成人の系統的レビューでは、OARは骨折除外の感度がほぼ100%で、不要なX線を減らしうると報告されています。
小児のメタ解析でも感度が高く、X線を約25%減らせる可能性が示されています。
- 外果/内果周辺の痛み+「後縁〜先端の骨性圧痛」または「4歩荷重不可」→X線を検討
- 足部(中足部)痛+「舟状骨/第5中足骨基部の圧痛」または「4歩荷重不可」→足部X線を検討
急性期(~数日)の対応
RICEは定番だが、単独効果の根拠は強くない
RICE(安静・冷却・圧迫・挙上)は広く使われますが、高品質研究だけで各要素の効果を切り分けるのは難しい、という整理がされています。
冷却(アイシング)
間欠的な冷却(例:10分×2回+休憩)で、1週間後の活動時痛が小さかったというRCTがあります。
腫れや機能は差が出ないという報告もあります。
痛み管理目的で使い、皮膚障害(凍傷等)に注意します。
圧迫
圧迫は臨床的に広く受け入れられている一方、研究結果は一貫しない点も指摘されています。
「巻いたら終わり」ではなく、循環・感覚のチェックと腫脹計測(フィギュアエイト等)で経過を追うのが現実的です。
NSAIDs(消炎鎮痛薬)
急性〜亜急性期のNSAIDsは、痛み軽減や短期機能の改善が示されています(例:ピロキシカムのRCT)。
ただし鎮痛で動きすぎるリスクや副作用(胃腸症状など)があるため、医師の判断も含めて慎重に使います。
※外用NSAIDs(例:ケトプロフェン貼付剤)も有用性が報告されています。
電気刺激(HVPCなど)・温熱療法
HVPC(高電圧パルス電流)は臨床で併用されることがありますが、RTP(競技復帰)に臨床的に意味のある差が出なかったという報告があります。
温熱は急性期に推奨されにくく、様々な研究でも腫れ増加が示唆されています。
まとめ:前編の結論(受傷直後に迷わないために)
- 腫れの量だけで重症度を決めず、問診→観察→触診→ROMの順で情報を集めます。
- 徒手検査は急ぎすぎない(タイミングで精度が変わる)。
- 骨折除外はオタワ足関節ルールが強力(成人・小児で高感度)。
- 急性期は「冷却・圧迫・疼痛管理」を軸に、根拠の弱い介入は目的を明確にして使います。






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