モビリティエクササイズとは
モビリティエクササイズは、スポーツやトレーニングにおいて必要とされる「能動的可動域(Active Range of Motion)」を拡大することを目的としたエクササイズです。
モビリティ(Mobility)とは「可動性」を意味し、スポーツでは「筋肉を収縮させながら可動域を広げる動作」により得られる可動性のことを指します。
これにより、競技パフォーマンスの向上や怪我の予防が期待できます。
可動域の種類:能動的と受動的
モビリティは「可動性」のことで、スポーツにおけるモビリティは「力発揮をしながら可動範囲を拡げる動作によって得る可動性」のことを意味します。
可動域(ROM : Range of Motion)は、能動的可動域(Active ROM)と受動的可動域(Passive ROM)の2種類に大別されますが、主に前者がこれにあたります。
能動的可動域(Active Range of Motion)
能動的可動域とは、自分の筋力を使って動かせる範囲であり、モビリティエクササイズで特に強化を目指す領域です。
通常は、受動的可動域よりも狭いものの、スポーツ動作での効率を高めるうえで重要な可動域です。
これは、相反性拮抗抑制を活用しており、スポーツ前の準備運動として利用されます。
相反性拮抗抑制
主動筋が収縮する際に、同時に拮抗筋が弛緩する生理的なメカニズム
受動的可動域(Passive Range of Motion)
受動的可動域は、他者のサポートや重力などの外部の力を借りて動かせる範囲を指します。
スタティックストレッチ(静的ストレッチ)でこの可動域を拡大することが可能で、一般的なストレッチやパートナーストレッチがこれに該当します。
受動的可動域は通常、能動的可動域よりも広いですが、自身の力でコントロールすることはできません。
これによる可動性は、フレキシビリティ(柔軟性:Flexibility)と表現されることが多くあります。
受動的可動域を指標とするものに関節可動域(ROM)測定があります。
ギャップを埋める
モビリティエクササイズは、能動的可動域と受動的関節可動域のギャップを縮めることを目的としています。
能動的可動域とは、自らの力で動かせる可動域であり、受動的関節可動域は外的な力によって得られる可動域です。
このギャップを縮めることで、筋肉や関節の動きが滑らかになり、より広範囲の動作が可能になります。
結果として、スポーツパフォーマンスの向上が期待できるのです。
実践例:Tスパインローテーション
モビリティエクササイズは特定の部位を固定した状態で、特定の部位を能動的に動かすエクササイズがほとんどです。
四つん這いで行うモビリティエクササイズ、「Tスパインローテーション(エルボーアップ)」を例に挙げます。
- 四つん這い(テーブルトップポーズ)になる
- ヒップロッキングを用いて股関節を屈曲位に固定し、骨盤を制御する
- 片手を後頭部に添える(スタートポジション)
- 肘を天井に向けてゆっくりと挙上していく
- 腰椎→胸椎→胸郭→肩甲骨→肩関節と順に可動性を高める
- 視線は肘の方向を向く
- 最終可動域で力を維持し、ゆっくりと深呼吸をする(通常1~3呼吸)
- ゆっくりとスタートポジションにもどる
- 8~10回繰り返す
効果①筋のアクティベーション
スポーツ動作に入る前に筋収縮を高めることで、筋力発揮をスムーズにし、怪我のリスクを減らす効果があります。
モビリティエクササイズにより、筋のアクティベーションを促進し、動作の効率を向上させます。
効果②スイッチングを促す
スポーツにおいては、主動筋の収縮と拮抗筋の弛緩の切り替え(スイッチング)を素早く行う必要があります。
モビリティエクササイズは、相反性拮抗抑制の原理により拮抗筋の弛緩を促し、動作の切り替えを滑らかにするため、怪我予防にもつながります。
Tスパインローテーションを例に挙げると下記のようになります。
収縮(主動筋) | 弛緩(拮抗筋) |
---|---|
一方向への体幹回旋筋 | 反対方向への体幹回旋筋 |
肩甲骨内転筋 | 肩甲骨外転筋 |
肩関節水平伸展筋 | 肩関節水平屈曲筋群 |
この相反性拮抗抑制によって柔軟性が向上し、怪我のリスクも軽減されます。
その他のモビリティエクササイズ
モビリティエクササイズには、ダイナミックストレッチや関節を広範囲で動かす運動が含まれ、ウォームアップやリハビリテーションの一環としても活用されます。
代表的なモビリティエクササイズ
ヒップサークル、ヒップロッキング、スパイダーマンストレッチ、インチワーム(ハンドウォーク)、ワールドグレーテストストレッチ
プレパレーションとしての役割
プレパレーションとは、スポーツやトレーニングの本運動に入る前の準備運動の一部です。
モビリティエクササイズは、パフォーマンスを引き出し、怪我の予防をするために欠かせない要素です。
まとめ
モビリティエクササイズは、能動的可動域を広げ、スポーツパフォーマンスの向上と怪我の予防に役立つ重要なエクササイズです。
特に、相反性拮抗抑制やアクティベーション効果により、柔軟かつ力強い動作が実現できます。
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