筋肥大とは
筋肥大とは筋横断面積の増大、つまり筋肉を太くするということです。
筋肥大はトレーニング刺激に対して筋が適応することで生じます。
スポーツパフォーマンスを向上させたい、筋肉を大きくしたい、美ボディを目指したいという方に避けて通れないのが筋肥大です。
筋肥大は簡単にできない
最近はボディメイクが流行しており、逞しい体や、美しいシルエットを入手したいという人が増えています。
一方でトレーニングを指導していると、脚や腕が太くなるのでは?、胸板が厚くなるのはいやだという人が一定数います。
特に細マッチョ思考の男性やダイエットを目的としている女性に多い傾向があります。
安心してください!筋肉はそんなに簡単に太くなりません!
明確な筋肥大が確認できるまでに8~12週間のトレーニング継続が必要といわれています。
筋肥大を目的としたトレーニング
筋肥大を目的としたトレーニングのトレーニング変数は下記の通りです。
負荷強度 | 反復回数 | セット数 | 休息時間 | 動作範囲 |
---|---|---|---|---|
8~12RM 70~85%1RM | 8~12回 | 3~6セット | 30~90秒 | フルレンジ |
この設定のトレーニングを週2~3回、2~3ヵ月以上継続します。
なぜ、このようなトレーニング変数に設定されるのかを解説していきます。
反復継続不能まで行う
筋肥大を目的としたプログラムでは、疲労によって反復継続不能(Training to Failure)まで挙上を繰り返す方法を用いることが多くあります。
反復継続不能まで動作を繰り返すことで、ターゲットとする筋群において運動単位の動員増加や代謝産物の蓄積が促されます。
なぜ反復回数が8~12回か
局所的な筋疲労によって生じる代謝産物は乳酸、一酸化窒素、水素イオンです。
乳酸は、グリコーゲンをピルビン酸に変換する過程の「解糖系」で生じます。
高強度の運動を30秒間ほど継続するミドルパワー発揮で多量に生じ、筋内を酸性化するため、運動継続が困難となります。
レジスタンストレーニングの8~12回はちょうど30秒間ほどの運動です。
もっとも乳酸が蓄積しやすい反復回数と言えます。
解糖系については別の記事で解説しています。
なぜセット間休息が30~90秒か
セット間休息時間は30~90秒に設定されています。
これは、他の目的(筋力やパワー)と比較して短い時間設定です。
乳酸などの代謝産物を多量に含んだ血液は、時間の経過とともに全身に流れます。
代謝産物が全身に流れると、局所の疲労が回復し、再び反復回数が可能となります。
しかし次のセットで、再び局所に代謝産物を蓄積させる必要があり、効率的ではありません。
筋肥大を目的としたトレーニングにおいては、代謝産物が局所に留まっているうちに次のセットを再開する方が良いとされています。
つまり30~90秒は、代謝産物が全身に還流せず局所に滞留し、ある程度反復回数も可能である、最適な時間といえます。
代謝産物は筋肥大を刺激する
多量に蓄積された代謝産物を含んだ血液が全身を流れると、視床下部(間脳)に作用し、下垂体前葉から成長ホルモン(GH)が分泌されます。
成長ホルモン(GH)の分泌を受け、肝臓からインスリン様成長因子(IGF-1)が分泌されます。
インスリン様成長因子(IGF-1)は、特に筋肉、骨、肝臓、腎臓、神経、皮膚、肺の細胞を成長させる影響をもたらします。
ホルモンは受容体が活性化されている組織に強く作用します。
筋組織はトレーニングによって物理的にもダメージを受けているため受容体が活性化されており、筋の成長に強く作用されます。
なぜ3~6セットか
トレーニング量を一定にした場合、反復継続不能まで挙上を繰り返さない場合と比較して筋肥大の効果が大きくなるというエビデンスは十分ではありません。
同じ部位であれば「週10回セット程度で構成するプログラム」が有効といわれています。
同じ部位のトレーニングを週2~3回の頻度で行うのであれば、3~6セット程度が適切と言えます。
有酸素運動との組み合わせに注意
トレーニング経験のある選手は、長時間の持久力(エンデュランス)トレーニングの実施により、トレーニングによる筋肥大効果を抑制する可能性があると言われています。
筋肥大を目的としたトレーニングと、長時間の有酸素運動の組み合わせには注意が必要です。
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