スポーツ現場でのケガ予防におけるナッジの活用法|行動経済学で見える新たな視点

スポーツ現場でのケガ予防におけるナッジの活用法|行動経済学で見える新たな視点 スポーツ現場
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ナッジ(Nudge)とは?

ナッジ(Nudge)とは、行動科学の知見や理論に基づいて、望ましい行動をとれるよう人を後押しするアプローチのことです。

具体的には、人々に行動を起こすための「仕掛け」や「そっと後押し」してくれる「きっかけ」でのことです。

ナッジの本来の意味は、合図のために「そっと突っつく」「肘で小突く」動作

スラッジとは

対照的に、スラッジは人々を悪い方向に導く要因です。

スラッジを減らし、ナッジを効果的に活用することで、行動をポジティブに変えることができます。

「スラッジ」の本来の意味は「泥」

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意思決定の2つの思考モード

人は日々の意思決定を無意識に行っていますが、これには2つの思考モードがあります。

直観的で速い思考

日常的な事案を直観や経験に基づいて瞬間的に判断するモードで、多くの情報に対応できます。

疲労やストレスを感じている状態や、「緊急事態」のような交感神経優位の状態で優位に作動します。

ただし、価値や確率についての認識や見積もりのズレ、すなわち「認知バイアス」が生じやすいです。

理性的で遅い思考

複雑な事案を理性に基づき熟慮的に判断する思考モードで、合理的な判断を行うことができます。

注意力を要し、脳がエネルギーを要するため、疲労しているときや、瞬間的な判断が求められるときは作動しにくくなります。

ナッジは「直観的で速い思考」の無意識を応用

人は日々の意思決定の大半を無意識に自動的に行い、意思決定にかかる労力を節約しています。

「直観的で速い思考」は迅速な判断を行うため、日常的な行動や選択において無意識に働きます。

ナッジはこの特性を利用し、個人が意識することなく望ましい行動を取るよう促す仕掛けです。

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日常生活におけるナッジ

日常生活には、多くのナッジが存在します。以下はその具体例です。

足跡マーク

コンビニやスーパーのレジに設けられた「足跡のマーク」は、無意識に人々を整然と並ばせるナッジの一例です。

これは「そこに並んでください」と誰も言わずとも、自然に行動を促します。

トイレの貼り紙

「いつも綺麗に使っていただきありがとうございます。」という貼り紙は、利用者がトイレを丁寧に利用することを心掛けてもらったり、汚してしまった際に清掃を促すためのナッジです。

男子小便器のステッカー

男子トイレの小便器に虫や標的の絵が描かれているステッカーを見かけます。

ここに狙いを定めることで散乱を防ぎ、トイレを清潔に保つ効果があります。

自分にナッジを仕掛ける方法

自分自身にナッジを仕掛ける方法もいくつかあります。

スマホのリマインダー機能

日常のルーティンを忘れがちな場合や、定期的に行いたい行動は、スマホのリマインダーアプリを活用すると良いでしょう。

これにより、重要な行動を忘れずに実行できます。

ビジュアルキューの活用

スマホや鍵、腕時計、眼鏡などを失くしたり、置き忘れたりしたことはありませんか?

目に留まる場所に配置することで、自然にその行動を思い出させます。

たとえば玄関のドアに小物入れを設置したり、家の中の目立つ位置に配置したり、職場や外出先の目につく場所に置いておくことがナッジに該当します。

ナッジをスポーツ現場に活用する

スポーツ現場では、選手やスタッフが良い選択を無理なく行えるようにナッジを取り入れることが重要です。

特に「直観的で速い思考」では疲労やストレスを感じている状態や、「緊急事態」のような交感神経優位の状態の選手が多く存在しているスポーツ現場では、ナッジはかなり効果的な手法とも言えます。

マットやケアグッズの配置

グラウンドや体育館の練習エリアの中でも、目立つ場所にストレッチマットやセルフケアグッズを置くことで、選手がセルフケアやリカバリーを行いやすくなります。

給水ステーションの設置

フィールド近くのところどころに給水ステーションを設けることで、水分補給を促進します。

トイレにカラーチャート表を掲示

熱中症予防として尿の色で脱水状態をチェックするカラーチャートがあります。

選手がよく利用するトイレに貼ることでセルフチェックを促します。

男性であれば小便器の上、女性であれば便座に座った正面の壁などに貼ると、選手が自身の尿の色をチェックしやすくなります。

熱中症の予備軍『隠れ脱水症』の見つけ方 厚生労働省

新聞記事やネットニュースの記事を掲示

強豪チームやライバルチーム(選手)の記事を選手の目につきやすい場所に掲示します。

他のチームの取り組みやインタビュー記事を見ることで、選手の動機づけに働きかけ、モチベーションアップを促します。

リマインダーを活用する

補食やセルフケアの時間を設け、リマインダーとアラームを設定するのも良いでしょう。

練習やトレーニングの最中であっても、決まった時間に補食を摂取したり、セルフケアを行うことで、選手がその習慣を身につけることができます。

行動経済学をスポーツ現場に

「〇〇をした方が良い」と理解していても、実行に移せないことは多々あります。

行動経済学は、こうした人間の行動を理解し、ケガ予防における新たな戦略を提供します。

認知バイアスを理解し、適切なナッジを取り入れることで、選手の安全を守ることができます。

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