アメリカスポーツ整形外科学会に掲載された論文
今回紹介するのは、2010年にアメリカスポーツ整形外科学会(American Orthopaedic Society for Sports Medicine)に掲載された論文です。
Risk of Serious Injury for Young Baseball Pitchers: A 10-Year Prospective Study
対象は9~14歳の投手
この研究の対象は9~14歳の少年野球投手です。418名を10年間追跡調査しました。
この研究では下記のリスク要因を仮説として研究が進められました。
ケガの発生率は5.0%
10年間の累計ケガ発生率は5.0%(481名中25名)でした。
このうち3名が肘の手術を受け、7名が肩の手術を受けました。
手術は受けなかったものの、14名が投球障害で引退しました。
この研究で明らかとなった危険因子
この研究で明らかとなったリスク要因を表にしてまとめました。
1年間で100イニング以上投球した選手のケガ発生リスクは3.5倍でした。
危険因子 | オッズ比 | 95%信頼区間 | p値 |
---|---|---|---|
4年間以上の研究期間中に投球を続ける | 1.6 | 0.69 – 3.51 | 0.37 |
1年間で100イニング以上投球した | 3.5 | 1.16 – 10.44 | 0.049 |
13歳までにカーブを投球した | 1.6 | 0.60 – 4.47 | 0.41 |
3年以上捕手としてもプレーした | 2.7 | 0.93 – 8.19 | 0.088 |
所感:この研究の限界
この研究では、ケガが生じた25名を対象として統計処理(フィッシャーの正確確率検定)を行っています。
ケガをした選手のn数が少ない影響で、95%信頼区間の範囲が広く、p値も高く出ています。
もう少しn数が多ければ、他の危険因子の有意差も出たかもしれません。
下記リンクの通り、多くの日本の高校野球選手は痛みやケガを抱えてプレーを続けています。
そもそも、この研究は自己申告に基づいており、本当にケガをした選手が5.0%しかいなかったのかも疑問です。
年間100イニング以上投げるのは危険か
今回の論文では一概に言えませんが、少年野球の投手において、年間100イニング以内の投球に留めることは一つの指標となるかもしれません。
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