理学療法士の業務範囲と独立開業の制限
理学療法士は国家資格でありながら、独立して開業することは法律上認められていません。
これは、理学療法士が医師の指示のもとで業務を行うことが義務付けられているためです。
この記事では、その法的な背景や業務制限について詳しく解説します。
理学療法士とは?
理学療法士及び作業療法士法第2条第3項において、「理学療法士」は厚生労働大臣の免許を受け、医師の指示のもとで理学療法を行う者と定義されています。この「医師の指示の下」という条件が、独立開業の制限につながっています。
第二条 3
この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。
理学療法士及び作業療法士法
医師の指示を受けた場合のみ可能なマッサージ
理学療法士がマッサージを行うには、病院や診療所内、または医師の具体的な指示のもとに限られます。
法的には、マッサージ業務を行うにはあん摩マッサージ指圧師免許か医師免許が必要ですが、理学療法士は医師の指示がある場合に限りマッサージを業務として行うことが許可されています。
理学療法士及び作業療法士法には下記のように記載があります。
理学療法士が、病院若しくは診療所において、又は医師の具体的な指示を受けて、理学療法として行なうマツサージについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第一条の規定は、適用しない。
医療保険でリハビリテーションを受けるための条件
理学療法を医療保険適用で受けるには、医師の指示に加え、疾患ごとに設定された算定日数内である必要があります。
例として、脳血管疾患は発症から180日、運動器疾患は150日が上限です。
リハビリテーション算定日数
算定日数とは、リハビリテーションを医療保険適用で受けられる日数の上限で、下記のように定められています。
リハビリテーション 適用疾患 | 発症・診断または 手術日から起算 |
---|---|
脳血管疾患 | 180日 |
廃用性症候群 | 120日 |
運動器疾患 | 150日 |
呼吸器疾患 | 90日 |
リハビリテーション算定日数の上限の除外対象のケース
算定日数を超えても、リハビリテーションが医療保険の適用となるケースがあります。
非常に限られたケースですが下記リンクを参考にしてください。
保険適用外でのリハビリテーション
算定日数を超えた場合でも、医師の指示があれば医療保険適用外でリハビリテーションを続けることは可能です。
病院やクリニックによっては、保険適用外でリハビリを継続する体制を整えているところもあります。
日本理学療法士協会の見解
公益財団法人日本理学療法士協会は、理学療法士が医師の指示なしに独自でリハビリテーションを行うことは法律違反であると強調しています。
また、開業権は法律で認められておらず、理学療法士は医師との連携の上で業務を行うことが大前提とされています。
・最近、理学療法士が施術所、患者宅で保険を利用せずにリハビリテーションをしていることがホームページ等で散見される
・医師の指示を得ずに理学療法することは違反行為である
・理学療法士の「開業権」「開業」は法律で全く認められていない
・身体に障害のない方への予防目的の運動指導は法律に抵触しない
・医師との連携の上で運動指導を行うこと
保険適用外の理学療法士活動に関する本会の見解
医師の診療補助という本来の役割
理学療法士及び作業療法士法第15条には、理学療法士は診療の補助として理学療法を行う者であると規定されています。
このため、理学療法士が独自にリハビリテーションを行うことは、本来の業務範囲を超え、医師の信頼を損ねるリスクがあると指摘されています。
第十五条
理学療法士又は作業療法士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として理学療法又は作業療法を行なうことを業とすることができる。
まとめ:理学療法士の開業は法律で認められていない
以上のように、理学療法士は医師の指示に従って業務を行うことが義務付けられており、法律により独立開業が制限されています。
また、業務内容についても医師の診療補助の範囲に限られているため、理学療法士が自己判断で開業や独立したリハビリテーション活動を行うことは法律違反となります。
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