1日8,000歩以上歩くと寿命が延びる?
日々の健康維持のために「1日10,000歩」を目標にしている方も多いのではないでしょうか?
実は、この目標には明確な根拠がないことが指摘されています。
しかし、2020年にアメリカで発表された研究では、1日8,000歩以上歩くことが、死亡率の低減と大きく関係していることが明らかになっています。
本記事では、歩数と寿命の関係について、最新の科学的データをもとに詳しく解説します。
Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults
1日8,000歩以上の歩行が寿命に与える影響
米国の40歳以上の成人を対象にした大規模なデータ分析では、1日4,000歩と比較して8,000歩を歩く人々の死亡リスクが半減することが示されました。
さらに、1日12,000歩歩いた人々では、リスクが65%も減少しています。
調査対象は、2003年から2006年にかけて全国健康・栄養調査に参加した40歳以上の米国成人で、調査期間中の死亡率は2015年12月まで追跡されています。
研究が示す歩数と死亡率の驚くべき関係
平均歩数と死亡数
参加者の平均歩数は1日9,124歩。
平均10.1年の追跡期間中に1,165人が死亡しました。
心血管系疾患による死亡が406人、がんによる死亡が283人でした。
歩数別の死亡率:1日8,000歩で劇的な改善
1日の歩数 | 発生密度 (1,000人あたり) | 死亡者数 |
---|---|---|
4,000歩未満 | 76.7人 | 419人 |
4,000〜7,999歩 | 21.4人 | 488人 |
8,000〜11,999歩 | 6.9人 | 176人 |
12,000歩以上 | 4.8人 | 82人 |
研究結果から、1日8,000歩のウォーキングが全死因死亡率を有意に低下させることがわかりました。
この数値は、1日12,000歩と同様に死亡率の低下と関連しています(HR、0.49[95%CI、0.44-0.55])。
歩行強度と死亡率
次に、ピーク30ケイデンス(毎分の歩数)に基づく全死因死亡率の未調整発生密度について見てみましょう。
ピーク30ケイデンス(歩/分) | 発生密度 (1,000人あたり) | 死亡者数 |
---|---|---|
18.5〜56.0歩 | 32.9人 | 406人 |
56.1〜69.2歩 | 12.6人 | 207人 |
69.3〜82.8歩 | 6.8人 | 124人 |
82.9〜149.5歩 | 5.3人 | 108人 |
この表から、ピーク30ケイデンスの歩行強度と死亡率には一定の関連性が見られましたが、歩数ほどの関連は見られませんでした(HR、0.90 [95% CI、0.65-1.27]、傾向のP値 = 0.34)。
1日8,000歩の目標設定で健康寿命を延ばす
この研究により、米国成人の代表的なサンプルにおいて、1日あたりの歩数が多いほど全死因死亡率が低くなることが示されました。
歩行の強度については、有意な関連は見られませんでしたが、1日8,000歩を目標にすることで健康を維持する重要性が再確認されました。
クリティカルシンキング
研究論文を読む際は、鵜呑みにせずにクリティカルシンキングを用いて批判的思考を心がけるようにしましょう。
研究に潜んでいる研究の限界やバイアスを考慮する必要があります。
参加者の健康状態の影響
対象となった40歳以上の成人は、それぞれの健康状態が異なります。
慢性疾患を持つ人は、そもそも歩数が少ない傾向があるため、健康な人と比較してバイアスが生じる可能性があります。
環境や文化による違い
この研究はアメリカで実施されました。
他国では、徒歩が日常生活の一部となっている文化も多いため、外的妥当性に疑問が残ります。
他の国や地域で同様の結果が得られるかは不明です。
測定機器の誤差
加速度計によって歩数が測定されていますが、デバイスの装着方法や使用頻度により測定誤差が生じる可能性があります。
また、参加者が日常のどの時点で歩いていたかが不明な点も課題です。
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