今回はあらゆる競技のスポーツ現場で遭遇しやすい膝の内側の痛み、鵞足炎について紹介していきます。
鵞足炎(がそくえん)は膝内側の痛み
鵞足炎の最も一般的な症状は膝の内側または後内側の痛みです。
他の膝関節のケガの中でも、比較的下部の方、脛骨(けいこつ:すねの骨)の内側に近いところに痛みが出ます。
同じ症状で疑われるのは内側半月板損傷や内側側副靭帯損傷です。
内側半月板や内側側副靭帯の痛みは、関節裂隙(大腿骨と脛骨の境界線:膝を曲げたときにできる凹み付近)の内側です。
内側半月板損傷は脚に体重を掛けて踏み込んだときに痛みが出ます。
内側側副靭帯損傷は膝に対してつま先を外に向けて捻ったり、つま先に対して膝を内側に入れる動きで痛みが出ます。
Pes anserine bursitis: incidence in symptomatic knees and clinical presentation
原因は同じ動作の繰り返しによる筋肉の張り
一般的にはランニングや階段の昇り降りのときに膝の内側に痛みが生じます。
スポーツではランニングやジャンプ動作、急激なストップ動作などの繰り返しによって膝の内側や後内側に痛みが生じます。
競技種目はバスケットボール、陸上競技、サッカー、バレーボール、テニスなど、球技スポーツを中心に様々な競技で発症します。
つまり、後述する鵞足を構成する3つの筋が硬くなると、鵞足炎になりやすいといえます。
動作不良や筋機能の低下がリスクに
ランニングやジャンプ(踏み切りや着地)動作において、動的アライメント(骨配列)不良を起こしていることが多いです。
特に、鵞足炎の場合は下記のような動作不良がみられます。
専門家でなければ、動作の評価や動作の修正も難しいかもしれません。
スマートフォンなどで正面や後方、側方などからランニングやジャンプ動作を撮影し、スロー再生などで確認してみるとわかりやすくなります。
鵞足炎の急性期の対処法
初期の炎症症状が強いとき、まずは練習から外れるなど、活動を制限します。
局所を氷で冷やし、抗炎症薬を用いることも有効です。
ステロイド注射と超音波治療も、炎症の緩和に有用であると報告されています。
そのため、できる限りスポーツドクターまたはかかりつけの整形外科医に診てもらい、適切な治療を受けましょう。
急性炎症が治まってきたら、3つの筋のストレッチや筋力エクササイズを行います。
3つの筋は、それぞれ起始部や走行、作用が異なるため、個々の筋に対し別々に対応していく必要があります。
スポーツ復帰は段階的に
前述の通り、安静にしていて痛みがなくなったからといって、いきなりスポーツに復帰すると再発します。
局所の痛みが治まり、日常生活に支障がなくなったら、まずはジョギングや小さなジャンプ動作から開始します。
痛みの再発や動作不良がおこらない状態が確認できたら、徐々に強度を上げていきます。
ジョギングであればランニングやスプリント走へ、ジャンプであれば高いジャンプや多方向へのジャンプおよび着地、リバウンドジャンプなどへと移行します。
ボールを使用した競技動作が許容できる範囲になったら、部分練習(ウォームアップや患部を使わない動作など)から始め、徐々に全体練習、試合へと段階的に参加の範囲を拡げていきます。
鵞足は3つの筋からなる
鵞足は膝の内側にあり、脛骨粗面の内側に位置します。
ガチョウの足のように3本の筋が集まり、停止部として付着するところです。
鵞足を構成する筋はHKと覚える
鵞足を構成する筋は、縫工筋、薄筋、半腱様筋の3筋です。
下記のように覚えておくと良いでしょう。
上記のように記憶しておけば、他の筋(半膜様筋など)と混同することはありません。
起始と作用が異なる
鵞足筋は3筋とも起始部が異なります。
縫工筋は大腿部前面、薄筋は大腿部内側面、半腱様筋は大腿部後面を走行しています。
筋名 | 起始 | 停止 | 作用 |
---|---|---|---|
縫工筋 | 上前腸骨棘 | 脛骨粗面内側(鵞足) | 股関節屈曲/外転/外旋,膝関節屈曲/内旋 |
薄筋 | 恥骨下枝 | 脛骨粗面内側(鵞足) | 股関節内転/屈曲-伸展,膝関節屈曲/内旋 |
半腱様筋 | 坐骨結節 | 脛骨粗面内側(鵞足) | 股関節伸展,膝関節屈曲/内旋 |
縫工筋のストレッチ
縫工筋は股関節屈筋群の一部です。一般的な股関節屈筋群のストレッチは写真の通りです。
薄筋のストレッチ
薄筋は内転筋群の一部です。一般的な内転筋のストレッチは写真の通りです。
半腱様筋のストレッチ
半腱様筋はハムストリングスの一部です。一般的なハムストリングスのストレッチは写真の通りです。
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