トレーニング × たんぱく質摂取量UP = 筋力向上
今回はSports Medicine-Openに掲載されている早稲田大学の宮地らによるシステマティックレビューとメタアナリシスを紹介します。
システマティックレビューやメタアナリシス(メタ解析)、ランダム化比較試験は、エビデンスの信頼性としてはとても高いものです。
エビデンスの信頼性については下記の記事をご覧ください。
最も効果的なたんぱく質摂取量は?
体重1kgあたりのたんぱく質摂取量については、1日2.0g以上摂る必要があるなど、さまざまな議論がされてきました。
この研究論文の概要は下記の通りです。
それでは詳しくみていきましょう!
筋トレと並行してたんぱく質摂取量を増やすと筋力が向上
メタアナリシスの結果、総たんぱく質摂取量増加群は何もしなかった群に比べ、筋力の増加幅が有意に大きいことが明らかになりました(平均差 1.40%〈95%CI:0.55~2.24〉)。
ただし、レジスタンストレーニングの有無で層別化すると、レジスタンストレーニング+総たんぱく質摂取量増加群では平均差 2.01%(1.09~2.93)であり、より群間差が大きくなった一方、総たんぱく質摂取量増加のみ群では平均差 0.13%(-1.53~1.79)であり、群間差が有意ではありませんでした。
つまり、筋力トレーニングを並行せずに総たんぱく質摂取量を増やしたとしても、筋力は向上していませんでした。
総たんぱく質摂取量1.5g/kg/日で筋力向上は頭打ち
スプラインモデルによる用量反応解析からは、レジスタンストレーニングを並行した群では総たんぱく質摂取量が多いほど筋力がより大きく向上するという関連が示されました。
具体的には、総たんぱく質摂取量が0.1g/kg/日増加するごとに、筋力が0.72%(95%CI;0.40~1.04)増加していました。
この関係は総たんぱく質摂取量が約1.5g/kg/日でピークに達し、それ以上の上乗せ効果は認められませんでした。
一方、総たんぱく質摂取量増加のみ群では、総たんぱく質摂取量が1.3g/kg/日まで、ごくわずか筋力が向上するのみという傾向がみられました。
筋トレ+高たんぱく食で60歳以上でも効果あり
年齢を60歳未満と60歳以上とに分けると、全体解析では、60歳未満は総たんぱく質摂取量増加効果が有意であり(MD2.25%〈0.95~3.54〉)、60歳以上は有意差はありませんでした(MD0.64%〈-0.47~1.75〉)。
ただし、レジスタンストレーニング+総たんぱく質摂取量増加群のRCTのみを対象とする解析では、60歳以上も有意な筋力向上が認められました(MD1.38%〈0.36~2.36〉)。
筋トレ+高たんぱく食で女性でも効果あり
性別で分けると、全体解析では、男性は総たんぱく質摂取量増加効果が有意であり(平均差 1.64%〈0.37~2.91〉)、女性は有意差はありませんでした(平均差 1.38%〈-0.28~3.04〉)。
ただし、レジスタンストレーニング+総たんぱく質摂取量増加群のRCTのみを対象とする解析では、女性も有意な筋力向上が認められました(平均差 1.54%〈0.46~2.62〉)。
筋トレをすれば、元々のたんぱく摂取量に関わらず効果あり
ベースラインの総たんぱく質摂取量が体重1kgあたり1g/日未満と、体重1kgあたり1g/日以上とに二分すると、レジスタンストレーニング+総たんぱく質摂取量RCTでは、総たんぱく質摂取量の多寡(多い少ない)にかかわらず有意な筋力向上が認められました。
これに対してトレーニングを行わなかった群のRCTでは総たんぱく質摂取量の多寡にかかわらず筋力向上が有意ではありませんでした。
また、追加たんぱく質摂取量を体重1kgあたり0.5g/日未満と、体重1kgあたり0.5g/日以上とにとで二分した解析の結果も同様に、レジスタンストレーニング+総たんぱく質摂取量RCTでは、追加たんぱく質摂取量の多寡にかかわらず有意な筋力向上が認められました。
これに対してトレーニングを行わなかった群のRCTでは追加たんぱく質摂取量の多寡にかかわらず筋力向上の有意差はありませんでした。
開始3ヵ月未満が最も効果あり
総たんぱく質摂取量増加を開始後の期間 3ヵ月未満と 3ヵ月以上とに二分すると、全体解析では、3ヵ月未満のRCTで筋力向上が有意であり(平均差 1.90%〈0.91~2.91〉)、3ヵ月以上のRCTでは有意差はありませんでした(平均差 -0.05%〈-1.52~1.43〉)。
レジスタンストレーニング+総たんぱく質摂取量増加群のRCTのみを対象とする解析でも結果は同様で、3ヵ月未満のRCTでのみ筋力向上が有意でした(平均差 2.27%〈1.23~3.30〉)。
総たんぱく質摂取量増加のみ群のRCTでは介入期間にかかわらず有意差はありませんでした。
過剰摂取は腎機能低下に注意
腎機能に対するたんぱく質摂取の悪影響に関して、相反する結果が報告されています。
特に、牛乳以外の動物源からの高たんぱく質摂取は、軽度の腎障害を持つ個人の腎機能の低下と関連しています。
妊娠中の高たんぱく摂取は、在胎週数未満の出生および新生児死亡のリスクを高めることが報告されています。
したがって、特に上記のようにリスクのある人たちにとっては、適度な量のたんぱく質を消費して窒素バランスを維持し、過度のたんぱく質摂取に伴うリスクを回避することが重要です。
この研究の方法について
システマティックレビューとメタアナリシスによって82件の研究論文が採択され、必要なデータを抽出しました。
82件の研究のうち59件は「レジスタンストレーニング+総たんぱく質摂取量増加」(RT)効果を検討し、24件は「総たんぱく質摂取量増加のみ」(non-RT)効果を検討していました。
平均年齢 55.6歳(RT介入 45.5歳、non-RT介入 72.1歳)
男女比 53%:47%
BMI 26.1(RT介入 26.6、non-RT介入 25.4)
摂取エネルギー量 2,035kcal/日(RT介入 2,141kcal/日、non-RT介入 1,752kcal/日)
介入群平均 1.49g/kg/日(0.79~3.80g/kg/日)
対照群平均 1.09g/kg/日(0.69~2.00g/kg/日)
群間差平均 0.38g/kg/日(0.04~2.06g/kg/日)
78件では通常の食事に高たんぱく食品・飲料を追加してRCTを実施
4件は食事内容を変更したRCTを実施
介入期間は平均22.0週(3週~2年)でした。
なお、4件(4.7%)の報告はバイアスリスクが高いと判断され、解析対象から除外されました。
この論文についてクリティカルシンキングをしてみましょう!
今回は、平均年齢45歳~75歳を対象にした中高年に対するたんぱく質摂取量を検証しています。RT介入群とnon-RT介入群で30歳程度の平均年齢の違いもあることから、若年層やアスリートを対象にした場合、結果がかなり違ってくる可能性があります。
また、レジスタンストレーニング+総たんぱく質摂取量増加群では、総エネルギー摂取量も高い傾向ですので、筋力向上とともに体重も増加するのではないかという点は気になるところです。
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