今回は、いつもと趣向を変えた内容。
先日ニュースで報じられていた時事問題です。
今アメリカ連邦機関で検討されている「家庭でのガスコンロ禁止」について掘り下げていきます。
今、アメリカでガスコンロの禁止が検討されている
室内の汚染の一因であり、子どもの喘息(ぜんそく)を引き起こすとみられるためだ。
先日、このような記事を見かけました。
現状で子どもが患っている喘息の約13%はガスコンロの使用に由来するという。
この記事を読んだときに、「さまざまな利権問題が関与しているのでは?」とTwitterに投稿したのですが、実際に論文を探して読んだところ、自分の発言を投稿を後悔しました。
その理由を紹介していきます。
小児喘息の12.7%がガスコンロ使用に起因する
米国における現在の子どものぜんそく(以下、小児喘息)の12.7%(95% CI = 6.3-19.3%)が、ガスコンロの使用に起因することがわかりました。
喫煙/受動喫煙に起因する小児喘息と同等レベルであることがわかりました。
なお、ここで紹介している論文の詳細は下記を参考にしてください。
Population Attributable Fraction of Gas Stoves and Childhood Asthma in the United States
この論文では、米国のアメリカ住宅調査、およびデータのある9つの州からデータを比較しています。
ガスコンロ使用率の高い州でリスクが高い
米国では35%の世帯で普及し、中でもカリフォルニア州やイリノイ州では68%に達しています。
子どものいる世帯に置き換えると、イリノイ州では79.1%がガスコンロを使用しているが、フロリダ州では9.1%程度にとどまっています。
今回の研究では、「ガスコンロのある家庭に住む子供の割合が高い州では、ガスコンロの使用がなければ理論的に防ぐことができる小児喘息の割合が高い傾向がある」といえます。
つまり「ガスコンロの使用率が減少すれば、小児喘息が減るかもしれない」ということになります。
これが、米連邦機関がガスコンロの禁止を検討している根拠です。
日本はガスコンロ大国だった
このように、ガスコンロは小児喘息のリスクを高めることがわかっています。
最近はIHクッキングヒーターの普及率も上がりつつある日本。
日本のガスコンロの使用率はどのくらいでしょうか。
令和2年度家庭部門のCO2排出実態統計調査事業委託業務(令和2年度調査分の実施等)報告書 – 環境省(5.3MB)
なんと、日本のガスコンロ使用率は73.3%、集合住宅に至っては82.8%でした。
アメリカの9州のうち、最も使用率の高かったカリフォルニア州やイリノイ州の68%を上回っています。
この記事を読んでいる皆さんも、住居選びの際はしっかりと検討した方が良いでしょう。
電気コンロか換気か
ガスコンロに起因する小児喘息の疾病リスクを減少させるためには、下記2つの取り組みが考えられます。
(2)換気を十分に行う
換気は小児喘息のリスクの低減につながるようですが、完全な除去はできないようです。
また換気扇も性能によって屋外に排出されなかったり、燃焼汚染物質の除去に効果的でなかったり、単に換気扇を使用しない場合もあるようです。
実際、米国国民健康・栄養調査のデータによると、ガスコンロを使用している子どものいる家庭うち、換気扇を常に使用している家庭はわずか21.1%であったという報告もあります。
ガスコンロ使用中は換気扇を常に使用することで、リスク低減につながる可能性はあるといえるでしょう。
ガスの種類による違い
ガスの種類によって結果が変わるかは明らかではありません。
アメリカでは主に天然ガスが使われているようです。
日本国内においては都市ガスとLPガスの2種類があり、都市ガスは天然ガス、LPガスは液化石油ガスを使用しています。
今回の報道から見える日本の問題点
日本において、ガスコンロの使用を中止しようという話は一切耳にしません。
ニュースを見たときに瞬間的に「米国の利権問題」を勘ぐってしまったのですが、調査した結果、科学的根拠(エビデンス)が確立されているものでした。
エビデンスがあるにも関わらずこういった情報発信に消極的な日本の「利権問題」を勘ぐるようになりました。
海外の情報はあらゆる手法で手に入れることができますので、皆さんもしっかりと情報をキャッチしてください。
下記記事に、海外の情報を収集する手法を掲載していますので、参考にしてください。
小児喘息に起因する要因はガスコンロに限らず、あらゆる要因が関与しています。
この詳細については、下記の記事で紹介しています。
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