腰痛の原因には、重篤な疾患が潜んでいることもあります。
決して自己判断をせず、主治医に相談の上、鍼治療を検討してください。
この記事には鍼治療の写真が含まれています。苦手な方はご注意ください。
WHOが認めた鍼灸の有効性
鍼治療の有効性の関連記事は下記リンク先から
80%の人が腰痛を経験する
腰痛は、世界的にも社会問題となっており、成人の約80%が人生で一度は経験すると言われています。
アメリカの調査では、成人の約4分の1が、過去3か月間に少なくとも1日続く腰痛があったと報告されています。
腰痛の分類
腰痛を発生機序や持続期間で分類すると下記の通りになります。
急性腰痛症はいわゆる「ぎっくり腰」のことです。
分類 | 持続期間 | 発生機序 | 時間経過による症状緩和 |
---|---|---|---|
急性腰痛症 | 4週間未満 | 突発的 | 緩和する |
亜急性腰痛症 | 4~12週間 | 突発的 | 緩和しやすい |
慢性腰痛症 | 12週間以上 | 慢性的 | 緩和しにくい |
足にしびれや痛みが出るような神経痛を伴う腰痛は、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など、器質的に障害を受けている可能性がありますので、まずは医療機関を受診してください。
鍼治療は腰痛に効果があることが証明されている
鍼治療は英語で Acupuncture (アキュパンクチャー)と呼ばれ、世界でもその効果が注目されて、研究が進められています。
ここでは、現時点でわかっている腰痛に対する鍼治療の効果をまとめます。
2018年のレビューでは、12件の研究(8,003人)のデータで、鍼治療は腰痛や首の痛みに対して効果があり、10件の研究(1,963人)のデータで、偽鍼治療よりも鍼治療の方が効果的であることが示されました。
鍼治療と無治療の差は、鍼治療と偽鍼の差より大きく、鍼治療の鎮痛効果は非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)に匹敵するものでした。
米国医師会(American College of Physicians)による2017年の臨床診療ガイドラインでは、「慢性腰痛の第一選択治療として推奨される非薬物療法」に鍼治療が含まれています。
急性腰痛に対する鍼治療を支持するエビデンスは質が低く、慢性腰痛に対するエビデンスは質が中程度と判断された。
詳細は下記サイトを参考にしてください。
Acupuncture: What You Need To Know
Low-Back Pain and Complementary Health Approaches: What You Need To Know
急性/慢性腰痛症のどちらにも中程度の効果
2017年のレビューでは、腰痛に対する鍼治療に関する49件の研究(7,900人以上)のデータでは、鍼治療が急性腰痛に対して中程度の効果をもたらし、慢性腰痛に対しても中程度の効果をもたらすというエビデンスが示されました。
慢性腰痛症に対しては鍼治療の予後にも効果がある
米国医療研究品質調査機構 ( AHRQ : Agency for Healthcare Research and Quality ) の2018年のレビューでは、慢性腰痛に対する治療法の影響を治療終了後1カ月以上経過した時点で調査しました。
それによると、鍼治療は、偽鍼治療や通常のケアなどのコントロールと比較して、1~6カ月後の痛みや機能に対してわずかに大きな効果があることがわかりました。
また、ある研究では、12ヶ月以上経過した後に、痛みが大幅に軽減されることもわかりました。
米国医師会の臨床診療ガイドライン
腰痛治療に関する米国医師会の臨床診療ガイドラインには、慢性腰痛の初期治療のオプションとして(中程度の質のエビデンス)、急性/亜急性腰痛の治療オプションとして鍼治療が含まれています(質の低いエビデンス)。
急性・亜急性・慢性腰痛に対する非侵襲的治療法:米国医師会による臨床実践ガイドライン
急性/亜急性腰痛症に対する非薬物療法の効果
急性腰痛症の予後は、坐骨神経痛の有無にかかわらず一般に良好であり、最初の1ヶ月で大幅に改善する可能性が高いといわれています。
そのため医師は、患者に対し、痛みに耐えられる範囲で活動を続けるよう助言し、効果的なセルフケアの選択肢(温熱療法や鍼治療など)に関する情報を提供することが求められています。
疼痛への有効性 (エビデンスの質) | 非薬物療法 |
---|---|
あり (中レベル) | 表在温熱療法 |
あり (低レベル) | マッサージ 鍼治療 脊椎マニピュレーション |
なし (低レベル) | サポーター(コルセット) |
エビデンス不十分 | 経皮的電気神経刺激(TENS) 電気筋肉刺激(EMS) 干渉波療法 短波ジアテルミー 牽引 表面冷却 運動制御運動(MCE) ピラティス 太極拳 ヨガ 心理療法 集学的リハビリテーション 超音波 テーピング |
これはホットアイマスクのようなものを患部に貼るものだと思われます。
慢性腰痛症に対する治療法の効果
3か月以上続くような慢性腰痛症には、鍼治療が有効です。
エクササイズ(運動)と組み合わせることによりさらにその効果を高めることができるようです。
疼痛への有効性 (エビデンスの質) | 非薬物療法法 |
---|---|
あり (中レベル) | エクササイズ 集学的リハビリテーション 鍼治療 マインドフルネスに基づくストレス軽減 |
あり (低レベル) | 太極拳 ヨガ 運動制御運動 段階的リラクゼーション 筋電図バイオフィードバック 低レベルレーザー療法(LLLT) オペラント療法 認知行動療法 脊椎マニピュレーション |
なし (低レベル) | 超音波 経皮的電気刺激治療(TENS) キネシオテーピング サポーター(コルセット) |
エビデンス不十分 | 電気的筋肉刺激 干渉波療法 短波ジアテルミー 牽引 表在温熱療法 寒冷療法 |
放散性腰痛症(神経痛を伴う腰痛)に対する治療法の効果
坐骨神経痛に代表されるような、足の痛みやしびれを伴う腰痛症に対する効果は、エクササイズ(運動)が最もあるようです。
何らかの器質的な神経根の圧迫により痛みが出ている疾患のため、原因や症状の再現などに個人差があるため、エビデンスが示されることが難しいことが考えられます。
疼痛/機能の有効性 (エビデンスの質) | 非薬物療法法 |
---|---|
あり (低レベル) | エクササイズ |
なし (低レベル) | 牽引 |
エビデンス不十分 | 超音波 運動制御運動(MCE) ピラティス 太極拳 ヨガ 心理療法 集学的リハビリテーション 鍼治療 マッサージ 脊椎マニピュレーション 低レベルレーザー療法(LLLT) 電気的筋肉刺激(EMS) 短波ジアテルミー 経皮的電気治療(TENS) 干渉波療法 表在性温熱療法 寒冷療法 サポーター テーピング |
鍼治療による鎮痛効果は抗炎症薬レベル
鍼治療は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と比較して、急性腰痛の症状をより効果的に改善する可能性があるようです。
詳細は下記論文を参考にしてください。
Acupuncture for Acute Low Back Pain : A Systematic Review
鍼灸の可能性
日本の1年間の鍼灸治療の受療率は5.0%と報告されています。
アメリカでは6.4%の成人が鍼治療を受けており、年々増加傾向にあるようです。
世界的にも鍼灸の受療率が上がっていますが、90%以上の人が鍼治療の良さを経験していません。
腰痛でお悩みの方は、ぜひ鍼治療を体験してみてください。
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